資産運用のリスクを数値化して考えてみる 後編 -

資産運用のリスクを数値化して考えてみる 後編

      2018/10/31

普段、様々な方のお話しを伺っていて感じるのは、運用・投資を検討する際、多くの方が考える「リスク」は、元本割れするかどうかという視点が多いということです。
そこで前回は、金融商品についてそのリスクを数値化して考えてみました。漠然としたものを数字で見えるようにすることで、感情的にではなく客観的な判断がしやすくなると思います。
今回は、不動産投資と太陽光発電投資のリスクについて、具体的な数字を挙げて試算してみましょう。
ここでも、自分が投資した元本を割る、つまり、自分が投資した金額を回収できない場合はどのような時か、を考えてみます。
前回の最後にも書きましたが、考え方としてはこちらの式で表すことができます。

購入時にかかった金額 < A保有時に手元に残るお金 + B売却(処分)時に手元に残るお金

まずは不動産から。
以下のケースを考えてみます。
あくまでシミュレーションですので、それぞれの数字は仮のものです。実際には、立地や築年数等によっても状況は大きく変わってきます。

<不動産投資>
…例:東京都内(23区内)、区分所有、築年数15年と想定
・物件価格:3,000万円(ローン2,700万円、頭金300万円)
・購入諸費用:180万円
・満室想定賃料:195万円(表面利回り6.5%)
・空室率:5%
・経費:賃料の15~17%程度
・賃料下落率:0.5%/年
・借入金利:1.5%
・返済期間:25年
・10年後に売却(10年後の残債:1,740万円)
※不動産投資では所得税・住民税・事業税が別途課せられます。

購入時にかかった金額(式の左側)は、頭金300万円+購入諸費用180万円=480万円となり、保有時と売却によりこの金額を上回れば、元本を棄損することはありません。
(正確には、お金の時間的な価値も考慮する必要があるのですが、複雑になるのでここでは割愛します。)

不動産の場合は、マーケットのサイクル等から10年程度をひとつの目安とも考えられるため、式の右側を「10年保有+売却」としてみましょう。
まずA保有時に手元に残るお金は、10年の累積でざっと税引前222万円程度です。※

※1総合課税となるため、所得税率は個人により異なる
※2賃料下落率と空室率を考慮した10年間の家賃収入から10年間の支出(ローン支払い、経費)を差しい引いた金額

次にB売却時に手元に残るお金についてです。仮に10年後、満室想定賃料が購入時の95%(185万円)となり表面利回り7%で売却できた場合、売却価格は約2,643万円。※
残債(1,740万円)と諸経費(95万円)・長期譲渡所得に対する税金(58万円)を差し引くと、最終的に手元に残る金額は750万円程度です。

※売却価格は年間賃料収入÷表面利回りで算出

A222万円+B750万円=972万円 > 480万円で、元本を割ることはなさそうです。
(ただし、「A保有時に手元に残るお金」にかかる所得税・住民税は考慮していません。所得税率は個人により異なりますので、個別チェックが必要です。)

ではここで、少々負荷をかけてみます。空室率+5%、売却時の表面利回り+1%という条件に変更すると、保有時の空室率が10%、表面利回り8%での売却ということになります。

先ほどと同様、式の右側を「10年保有+売却」としてみましょう。
この場合、A保有時に手元に残るお金は税引前140万円程度です。※

※1総合課税となるため、所得税率は個人により異なる
※2賃料下落率と空室率を考慮した10年間の家賃収入から10年間の支出(ローン支払い、経費)を差しい引いた金額

B売却(処分)時に手元に残るお金については、上記の条件と同様、満室想定賃料が購入時の95%(185万円)となり、+1%となる表面利回り8%で売却できたとすると、売却価格が約2,313万円となり、残債(1,740万円)と諸経費(83万円)・長期譲渡所得に対する税金(7万円)を差し引くと、最終的には483万円程度です。※

※売却価格は年間賃料収入÷表面利回りで算出

A140万円+B483万円=623万円 > 480万円で、元本を上回りますが、「A保有時に手元に残るお金」にかかる所得税・住民税を考慮すると、このあたりが当初の投資元本を割るかどうかの境になりそうです。

上記は、どちらかと言えば都心寄りの物件を想定してみました。先ほども書きましたように立地や築年数によりシミュレーションは大きく異なりますので、考え方のご参考までにしていただければと思います。

次に太陽光発電について見てみましょう。こちらもそれぞれの数字は仮のものです。実際には設置場所等の条件によって異なります。

<太陽光発電投資>
…パネル容量86.4kW、設置場所栃木県、土地350坪、売電単価(税込)19.44円/kWh、年間予想発電量(初年度)100,721kWhと想定(栃木県那須烏山市 南向き架台勾配10度:エコスタイル社シミュレーションより引用)
・設備・施工価格(税込):1,489万円(ローン1,489万円)
・土地代金(税込):280万円
・整地代・電力負担金・その他諸費用(税込):157万円
・想定売電収入(税込):3,648万円/20年
・償却資産税:138万円/20年
・固定資産税:54万円/20年
・20年諸経費(概算):売電収入の4%程度
・モジュール出力低下率:初年度-2.5%その後1年経過ごとに-0.7%低下
・借入金利:2.15%
・返済期間:15年(利息254万円/15年)
※太陽光投資では所得税・住民税・事業税が別途課せられます。
※モジュール出力はメーカー出力保証規定の最低ラインまで低下すると仮定しています。
※20年諸経費は草刈り費用、電気代、保険費用を想定。

購入時にかかった金額(式の左側)は土地代と整地代などの諸費用437万円で、保有時と売却(処分)によりこの金額を上回れば、元本を棄損することはありません。
では式の右側について、まず固定価格買取制度が終了する保有20年時点のことを考えてみましょう。
A保有時に手元に残るお金は20年の累積でざっと1,568万円程度で初期費用の437万円を上回ります。※

※1上記不動産投資の事例同様、「A保有時に手元に残るお金」にかかる所得税・住民税は考慮していません。
※2出力低下率を考慮した20年間の売電収入から20年間の支出(ローン支払い、償却資産税、固定資産税、経費)を差し引いた金額

固定価格買取制度があるため、売電単価は20年間同じであり、基本的に収支が大きくぶれる可能性は少ないので、不動産投資のように、「負荷」をかけて試算することはあまり意味がなさそうです。

ただし、パワーコンディショナーの寿命については考える必要があります。一般には10~15年程度とも言われていますから、交換費用をある程度見積もっておいた方が良いでしょう。これがどの程度かが「 437万円 > 1,568万円-交換費用〇〇万円 +売却(処分)時に手元に残るお金」の式に少なからぬ影響を与えます。
また20年後に発電を継続するのか、設備を売却するのか、撤去するのかで売却(処分)時も加味した収支が変わってきます。
固定価格買い取り制度を終了した太陽光発電投資は現時点ではまだ事例が少なく、予測は難しいところですが、撤去するのであればその費用も見込んでおく必要があります。
今後の業界動向に注目です。

太陽光発電投資は20年の固定価格買い取り制度があるため、A保有時の収益は不動産投資より安定していますが、パワーコンディショナーの交換費用の見極めとB売却・処分時の予測がつきにくいのが特徴と言えるでしょう。
逆に不動産は、B部分についてはこれまでの実績や似た事例が多いので、マーケット状況によりある程度予測をしながら売却時を検討することができそうですが、A部分のブレが大きくなる場合もあることに注意が必要です。

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